2025年1月31日
大袋で販売されることも多いナッツ類ですが、一度開封した後に保管して食べようとした際に、いつもと違う味、酸化したようなにおいだった経験はありませんか。
今回の調査研究では、酸化の原因でもある直射日光が当たる場所で保管したナッツ類が、酸化してしまった際にかおりや味にどう影響があるのか、また、保管場所による酸化の影響について調査をしました。
くるみを使用し、日光が当たる条件で4週間保管しました。
今回検証したくるみは、開封済みで日光が当たる窓際に置き、チャックを完全に閉めず空気が入ってしまう状態での保管としました。
開封直後、1週間経過した物、2週間経過した物、3週間経過した物、4週間経過した物をそれぞれ取り出し、それぞれのくるみがどのように変化するのかを確かめます。
検査の方法は、検査員による嗅覚官能検査と、商品検査センターの2種類の機器(におい嗅ぎGCMSと味覚センサー)で結果を確認します。
検査員8人でそれぞれのくるみを嗅ぎ、「においなし」「わずか」「弱い」「感じやすい」「不快」の5段階で評価を行いました。
評価する際は個人の感覚ではなく、「わずか」は酸化臭がするかしないかでいえばする程度の強さで、「弱く」は酸化臭を探さなくてもわかる程度など、評価の指標をそろえています。
鼻でくるみを嗅いだときの評価は1週間経過するごとににおいの感じ方が1段階ずつ強くなっていく事が分かります。また、同じものを口に含んで味や風味を評価すると、鼻で嗅いだときよりもにおいの感じ方が1段階強いことが分かります。
におい嗅ぎGCMSと味覚センサーを使用し測定しました。
におい嗅ぎGCMSとは、機器と人の鼻をどちらも使用する分析方法になります。
機器分析にてにおいの成分を測定すると同時に、その成分のにおいを人の鼻でかぎ、においの質を確認することが可能な機器です。
それぞれのくるみを機器で分析したところ、保管期間が長いものほど酸化を想わせるにおい物質(アルデヒド類)が増加していたことが分かりました。
味覚センサーとは、味覚を数値化することのできる機器です。人工の脂質膜が人間の舌と同じ役割を果たし、味の違いを測定することができます。
こちらはレーダーチャートで測定結果を表したものです。薄いグレーの5角形は、開封直後のくるみで、点線の5角形は1週目から4週目の各くるみを表しています。
丸がついている「旨味コク」「旨味」はいずれも大きな変化は見られません。この旨味コク、旨味は、くるみを食べたときに感じるくるみらしさ、くるみのそぼくさの味覚になります。
しかし、にがみや渋味が増加していることにより、開封直後のくるみとくらべて違うと感じる可能性があります。
今回の条件で保管したくるみは、保管期間が長くなるごとに酸化臭を感じやすくなりますが、くるみらしい味はほぼ変化していないことが分かりました。
そして、検査結果から酸化の要因として、温度と光が影響している可能性があることが分かりました。
より詳しく原因を探るため温度や光の条件を変えて酸化臭に違いはあるのかを調べました。
温度条件:開封後のくるみを5℃、30℃の温度帯でそれぞれ保管しました。
光の条件:光が当たるものとアルミホイルでくるみを覆い光をさえぎったものをそれぞれ保管しました。
保管期間はいずれも3週間とし、嗅覚官能評価をおこないました。
結果は以下のようになっています。
検証結果から、酸化の原因としては光や熱が影響していることが分かりました。
以上のことから一度開封したくるみは直射日光を避け、室温もしくは冷蔵庫などの低温度帯で保管することをおすすめします。
気をつけて保管していたけれど、酸化臭がする...そんな時においしく食べる方法がないかと考え、試しにローストしてみました。
今回の調査研究で作成した酸化後のくるみについて、フライパンに入れて中火で5分間ローストしたものも合わせて官能評価を行いました。
ローストしたことにより香ばしいかおりがたち、酸化臭が分からなくなりました。また、口に含んでも同様の結果となりました。
官能評価の結果から、ローストすることにより香りが立ち酸化臭を感じなくなることが分かりました。少し酸化臭が気になる場合にはローストしてみるのも良いかもしれません。
しかし、味覚センサーの結果から、酸化したくるみは開封直後のくるみに比べてにがみや渋味が増していることが分かるため、開封後はお早めにお召し上がりいただくのが一番です!